①牛乳の栄養と身長 ②牛乳と成長ホルモンと身長 ③遺伝と身長
骨の成長に必須なカルシウム摂取は日本人では不足気味

身長といえばカルシウム
でも日本人の成長期のカルシウム摂取量は不足気味だね
わかっていても、毎日摂取するとなると大変なんだね
身長を伸ばすためには、骨を成長させなければなりません。
骨を成長させるためには、骨にカルシウムを沈着させる必要があります。
骨にカルシウムを沈着するためには、カルシウムを補給しなければなりません。
このような理由から、背を伸ばす上でカルシウムの摂取がすすめられているのです。
ただし、日本人の成長期におけるのカルシウムの摂取量は不足気味であることが 令和元年の調査結果* から明らかになっています。

カルシウムの推奨量と比べると、成長期の摂取量はかなり少ないんだね
男性では7~14歳で平均676mg 、15~19歳で平均504mgのカルシウム摂取量
(推奨量は8~9歳650mg、10~11歳700mg、12~14歳1000mg、15~17歳800mg)
女性では7~14歳で平均594mg、15~19歳で平均454mgのカルシウム摂取量
(推奨量は8~9歳750mg、10~11歳750mg、12~14歳800mg、15~17歳650mg)

牛乳は簡単に飲むことができ、カルシウムが豊富に含まれるので、骨の原料となるカルシウムを補充するにはうってつけの食品だと思います。さらに牛乳のカルシウムの吸収率は他の食品と比べて優れていることもあり、身長を伸ばすのに役立つといわれるのです。
食事から摂取したカルシウムが骨になるまで

食事から摂取したカルシウムは腸で吸収され、血管を通って骨に運ばれるよ

カルシウムが骨に沈着するまでについて、もう少しくわしく説明します。
食事等から摂取したカルシウムが骨に沈着するまでにはいくつかの経路をたどることになります。
まずは摂取したカルシウムは腸で吸収され血液に取り込まれます。ただし、 口から摂取したカルシウムが余すことなく血液に取り込まれるということではありません。先ほど牛乳のカルシウムは吸収率に優れると書きましたが、この血液に取り込まれる割合が牛乳の場合はほかの食品に比べて高いということになります。
血液に取り込まれたカルシウムは、その後血管を通って骨まで運ばれ、骨に沈着され、骨の成長等に役立てられます。

吸収したカルシウムを骨に沈着させるためには、ビタミンDやビタミンKも必要になるんだね

カルシウムが骨に沈着するまでの過程において、カルシウムのほかに欠かせない二つの栄養素があります。
ひとつは食事から摂取したカルシウムを腸から体内に吸収する際に必要となるビタミンD、
もう一つは体内に吸収されたカルシウムを骨に沈着させる際に必要となるビタミンKです。

ビタミンDは牛乳にも含まれますが、ビタミンKはほどんど含まれません。ただしビタミンD、ビタミンKはともに体内でもつくることができるビタミンになります。そのため食品から摂取する栄養素としてはカルシウムがより重要視されているのです。
骨の伸長に関与するカルシウム・ビタミンD・ビタミンKの摂取基準量と牛乳の含有量

たった1杯の牛乳でも、成長期のカルシウムの1日推奨量の20%を超えてるよ
1杯の牛乳なんてあっという間に飲めるから、簡単にカルシウムを摂取することができるね
カルシウム、ビタミンD、ビタミンKの摂取基準量**と牛乳1杯(200g)に含まれる***比率を示します。
比率をみると最もカルシウムが必要とされる時期でも、たった1杯の牛乳で推奨量の20%を超えており、牛乳に含まれるカルシウムの量が豊富であることがわかります。
ちなみに最も必要とされる時期は、男性女性ともに12~14歳となっています。やはり成長期にはカルシウムが必要になるのですね。女性では8歳ころから、男性ですと12歳ころから推奨量が急に上がっています。
この時期が身長の伸ばしどころとなりますので、しっかりと栄養を取るようにしましょう。
*令和元年国民健康・栄養調査 **日本人の食事摂取基準(2020年版) ***日本食品標準成分表2015年版(七訂)


摂取基準量からみても、成長期にはより多くのカルシウムが必要になることがわかるね
【カルシウムの1日の摂取基準量と牛乳1杯(200g)に含まれる割合】
年齢 | 男性の基準量 | 牛乳200gに 含まれる割合 | 女性の基準量 | 牛乳200gに 含まれる割合 |
0~5カ月 | 200mg/日(目安) | 110% | 200mg/日(目安) | 110% |
6~11カ月 | 250mg/日(目安) | 88% | 250mg/日(目安) | 88% |
1~2歳 | 450mg/日 | 49% | 400mg/日 | 55% |
3~5歳 | 600mg/日 | 37% | 550mg/日 | 40% |
6~7歳 | 600mg/日 | 37% | 550mg/日 | 40% |
8~9歳 | 650mg/日 | 34% | 750mg/日 | 29% |
10~11歳 | 700mg/日 | 31% | 750mg/日 | 29% |
12~14歳 | 1000mg/日 | 22% | 800mg/日 | 28% |
15~17歳 | 800mg/日 | 28% | 650mg/日 | 34% |
18~29歳 | 800mg/日 | 28% | 650mg/日 | 34% |
30~49歳 | 750mg/日 | 29% | 650mg/日 | 34% |
50~64歳 | 750mg/日 | 29% | 650mg/日 | 34% |
65~74歳 | 750mg/日 | 29% | 650mg/日 | 34% |

通常、ビタミンDやビタミンKが不足することは少なそうだね
ビタミンDは健康な人が適度な日光のもとで通常の生活をしている場合、不足することは少ないと考えられています。しかし高齢者等、皮膚におけるビタミンD産生能力が低下している方で、屋外での活動の減少によりに日光を浴びる機会が減っている場合には、いつもより多く食事からも摂取することが必要だと指摘されています。ビタミンDはきのこ類、魚介類、卵類、乳類などに多く含れています。
【ビタミンDの1日の摂取基準量と牛乳1杯(200g)に含まれる割合】
年齢 | 男性の基準量 | 牛乳200gに 含まれる割合 | 女性の基準量 | 牛乳200gに 含まれる割合 |
0~5カ月 | 5μg/日 | 12% | 5μg/日 | 12% |
6~11カ月 | 5μg/日 | 12% | 5μg/日 | 12% |
1~2歳 | 3μg/日 | 20% | 3.5μg/日 | 17% |
3~5歳 | 3.5μg/日 | 17% | 4μg/日 | 15% |
6~7歳 | 4.5μg/日 | 13% | 5μg/日 | 12% |
8~9歳 | 5μg/日 | 12% | 6μg/日 | 10% |
10~11歳 | 6.5μg/日 | 9% | 8μg/日 | 8% |
12~14歳 | 8μg/日 | 8% | 9.5μg/日 | 6% |
15~17歳 | 9μg/日 | 7% | 8.5μg/日 | 7% |
18~29歳 | 8.5μg/日 | 7% | 8.5μg/日 | 7% |
30~49歳 | 8.5μg/日 | 7% | 8.5μg/日 | 7% |
50~64歳 | 8.5μg/日 | 7% | 8.5μg/日 | 7% |
65~74歳 | 8.5μg/日 | 7% | 8.5μg/日 | 7% |
【ビタミンKの1日の摂取基準量】
ビタミンKは腸内細菌によってもつくられますし、いろいろな緑黄色野菜に多く含まれるため、通常、健康な人は不足する心配はほとんどないといわれています。緑黄色野菜のほかにも海藻類、納豆にも多く含まれます。
(牛乳にはほとんど含まれない)
年齢 | 男性 | 女性 |
0~5カ月 | 4μg/日 | 4μg/日 |
6~11カ月 | 7μg/日 | 7μg/日 |
1~2歳 | 50μg/日 | 60μg/日 |
3~5歳 | 60μg/日 | 70μg/日 |
6~7歳 | 80μg/日 | 90μg/日 |
8~9歳 | 90μg/日 | 110μg/日 |
10~11歳 | 110μg/日 | 140μg/日 |
12~14歳 | 140μg/日 | 170μg/日 |
15~17歳 | 160μg/日 | 150μg/日 |
18~29歳 | 150μg/日 | 150μg/日 |
30~49歳 | 150μg/日 | 150μg/日 |
50~64歳 | 150μg/日 | 150μg/日 |
65~74歳 | 150μg/日 | 150μg/日 |
牛乳のカルシウムの吸収は効率が良い

カルシウムを多く含んでいても、体に吸収されずに排泄されてしまっては意味がないよね
牛乳のカルシウムの吸収率は約40%
量だけでなく、吸収率も優れるから、牛乳のカルシウムは体内で効率よく使われるんだね
先ほど食事から摂取したカルシウムは腸から体内に吸収されると記載しましたが、この吸収する割合は食品によって異なります。
例えば、牛乳では摂取したカルシウムの約40%が吸収されることがわかっています。牛乳と並びカルシウムが豊富なことで知られている小魚(ワカサギ・イワシ)の吸収率は約33%、野菜(コマツナ・モロヘイヤ・オカヒジキ)の吸収率は19%で、牛乳の吸収率の高いことが確認されています。****

牛乳のカルシウムの吸収率が優れる理由

吸収率が高い理由もわかっているし、カルシウムを摂取するには牛乳が良さそうだね
牛乳のカルシウム吸収率が高い理由としては主に2つの作用が考えられます。
一つはCPPという物質の働きです。牛乳のたんぱく質が消化される過程でCPPという物質が生成されますが、このCPPにはカルシウムの吸収を高める作用があるのです。一般的にカルシウムは小腸の下部まで運ばれるとほかの物質と結合してしまい溶け難くなってしまうので小腸から吸収され難くなります。ところがCPPはこの結合を抑えるくれるので、小腸の下部でもカルシウムをしっかりと吸収することができるのです。
もう一つは乳糖の働きです。牛乳に含まれる乳糖にはカルシウムの吸収を促進する作用があると考えられています。

せっかくカルシウムを摂取しても体に吸収されなければ意味がありません。牛乳にはカルシウムの吸収を促進させる作用もあるので、効率よくしっかりとカルシウムを活用することができるのです。
****日本栄養・食糧学会Vol.51 日本人若年女性における牛乳、小魚、野菜のカルシウム吸収率(1998年)